バングラデシュに“新時代”到来か──ユヌス暫定指導者、2026年4月で退任へ

ハシナ政権崩壊から1年。
民主主義の再起を託されたのは、84歳のノーベル賞受賞者だった。
ユヌス氏は、「選挙が正しくなければ、未来はない」と述べている。
ユヌス氏は以前から、選挙は2026年6月までに実施されると述べていたが、改革を進めるには暫定政権にできるだけ多くの時間が必要だとも強調していた。
しかし、各政党から選挙の時期を明確にするよう繰り返し要求されたことを受け、「2026年4月」に選挙を実施すると発表した。

革命のあとに訪れた静寂と、1人の老人の決意
2024年7月、南アジアの国バングラデシュで歴史的な転換が起きた。
15年間にわたって政権を握ってきたシェイク・ハシナ首相が、学生たちの蜂起によって退陣を余儀なくされたのだ。
怒りは教育の現場から始まり、街頭を埋め尽くすまでに広がった。
抑圧、汚職、選挙の形骸化──そのすべてに対する「NO」が若者たちの口から発せられ、政権は音を立てて崩れた。
その混乱の中で暫定政権リーダーに就任したのが、あのムハマド・ユヌス氏だった。

ユヌス氏のスタンス:権力には「全く興味がない」
グラミン銀行を創設し、貧困層へのマイクロクレジットによってノーベル平和賞を受賞したユヌス氏。
彼の登場は、多くの国民にとって希望の象徴でもあった。
しかし彼は、こう断言する。
「選挙が終わったら私は去ります。権力にしがみつく気は一切ありません。」
実際彼は様々なメディアで、選挙後に自身や閣僚が政治的ポストを望むことは「全くない」と語っている。
今回の役割は、あくまで移行期の「橋渡し」だという立場を貫いているのだ。
「7月憲章」と“新しいバングラデシュ”への設計図
ユヌス氏は「7月憲章(July Charter)」と呼ばれる包括的な改革案を発表すると明言している。
この憲章は、政党間の「合意形成委員会(コンセンサス・コミッション)」が起草しており、すべての政治勢力が受け入れられる形で民主制度の再構築を目指すもの。
「古いバングラデシュに別れを告げ、新しいバングラデシュを創りたい」
これは、単なる政治スローガンではない。
壊れかけた制度に手を入れ、「正しい選挙」を実現するという決意の表明だ。
2026年4月、運命の選挙へ──BNPの動きも加速
政局のカギを握ると見られているのが、バングラデシュ民族主義党(BNP)の実質的リーダー、タリク・ラーマン氏だ。
彼はハシナ政権下で有罪判決を受け、2008年からロンドンに亡命していたが、判決は取り消され、今回の選挙に向けてダッカ帰還が噂されている。
BNPが勝てば、政権交代は現実のものとなる。

南アジアから見える、“民主主義の再構築”という希望
この出来事は、バングラデシュという1国の話にとどまらない。
人口1億7000万のこの国が、腐敗や圧政を乗り越え、新たな社会契約を築こうとしている事実は、南アジア全体への希望とも言える。
「選挙が正しくなければ、この問題は二度と解決されない」
ユヌス氏の言葉には、年齢や栄誉ではなく、「責任」が宿っている。
この選挙が正しく行われたとき、バングラデシュは世界に「民主主義はやり直せる」と証明できるだろう。
外部リンク:
South Asia -South China Morning Post