【第2回】2万円で3LDK 生活コストとリアル “帰ったのに異国”──バングラデシュ12年ぶりの帰省録 

neocross

海外に行くとまず気になるのは物価だ。

「円安で海外旅行が高くなった」とよく言われるが、これはドルを基準にした話である。2024年、日本円は確かに下落傾向にあるものの、アジア諸国の中ではまだまだ“お金の力”が強い。

ただ、それは“過去と比べれば”の話であり、他の新興国も着実に経済成長しているため、日本の“相対的な優位”は少しずつ薄れてきている。

バングラデシュではこの“相対的な物価の安さ”に驚いた。特に、住宅コストの安さは想像以上だった。

あらむ
あらむ

円安だと海外旅行行きづらいですよね、、、

↓帰省時にとりあえず思ったことを書きなぐったメモ↓

*帰省は2024年3月

ダッカ市内、空港近くの3LDKマンション。家賃は16,000タカ(約2万円)。それでいて、エレベーター付き、広々としたリビング、そして建物の入り口には警備員まで常駐している。

日本の感覚で言えば、東京駅徒歩10分の3LDKが月2万円というようなものだ。

もちろん、これは現地でも「安くはない」部類に入る。
平均所得の水準からすれば、一人月収の半分以上を家賃に充てている家庭も多い。

それでも、“都市ど真ん中で家族4〜6人が広く暮らす”という暮らしが成立しているのは事実だ。

参照:Wise Payments Limited

https://wise.com/jp

水20タカ、バナナ農家の給料100タカ

物価の安さは家賃だけにとどまらない。

  • ペットボトルの水:20タカ(約26円)
  • コーラ:33タカ(約43円)
  • SIMカード:1GBあたり約20タカ(26円)
  • 移動(リキシャ/Uber初乗り):数十円〜数百円程度

農村部では、バナナを植える労働者の日給が100タカ(約130円)という現実もある。

通信費は買い切り型が主流で、使いすぎないように設定している人が多い。
データ無制限なんて贅沢は、そもそも必要とされていない。

ただ安いだけではない──暮らしの「ノイズ」

バングラデシュの生活には、“コスパの良さ”だけでは語れない側面もある。

  • 日に何度も停電し、冷蔵庫やエアコンが止まる
  • 水道水は飲めないため、すべて購入が必要
  • プロパンガスで調理、道路は未整備で渋滞が常態化
  • 下水道が未整備のため、ボットン式トイレも現役

公共インフラの未整備は、現地の人々にとっては「当たり前」でも、長く日本で暮らしてきた身にはやはり堪える。

それでも、この国にはある種の“秩序”が存在する。
驚くことに、貧富の差が激しくても、社会が不思議と崩壊していないのだ。

その鍵を握っているのが、信仰と共同体の思想だと考える。

信仰が支える秩序、そして分け合う文化

バングラデシュはイスラムの国であり、「アッラーが食べさせてくれる」という価値観が人々の根底にある。
だからこそ、持っている者が貧しい人に食べ物を分ける。

分け与えることが善とされ、見返りを求めない助け合いが、静かに社会を支えている。

また、家族を支えるために働くという価値観は、職業の上下を問わず広く共有されている。

おわりに:「豊かさ」とは、お金の話だけではない

日本に戻ってきて感じたのは、インフラの整い方が異次元ということだ。

電気、水、都市ガス、交通、下水道。
どれも当たり前にあるが、それがどれほど貴重なことかは、外に出て初めてわかる。

税金が高いと言われる日本だが、それによって享受しているものも多い。

もちろん、使い道の透明性や政治への監視は必要だが、“集団の幸福”に貢献している仕組みの恩恵を見直したいと思った。

便利さ、安全、秩序──それらをつくるために何が必要か。あらためて考える必要がある。

ダッカ:ジュミナパーク *シャツ一枚4000タカ(約5,000円)ほどでした。

著者について
新夢シャド
新夢シャド
1991年、バングラデシュ生まれ。7歳から東京で育つ。大学を卒業後、株式会社ファミリーマートで総合職として10年勤務。その後、ネオクロスを起業し、バングラデシュを中心に南アジアの投資や旅行、文化や人の交流などを幅広く発信している。
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