インド

デリー新州首相にレカ・グプタ氏──女性リーダーが切り拓く首都の未来

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インド首都デリーで、歴史的な政権交代が起きた。

2025年2月の選挙で、与党BJP(インド人民党)が27年ぶりにデリー州議会で多数を獲得。
その流れを受け、レカ・グプタ氏が新しいデリー州首相(Chief Minister)に選出され、近く正式に就任する見込みだ。

女性としてはデリー史上4人目の州首相である。

政治とジェンダー、そして都市改革が交差するこの瞬間は、インドにとって新たな節目となる。

政権奪還の意義:BJP(インド人民党)、27年ぶりの勝利

これまでの10年間、デリーでは「アーム・アドミ党(AAP)」が州政権を握っていた。

だが、都市インフラの不備や飲料水問題、そして酒政策をめぐる汚職スキャンダルなどが重なり、市民の不満が積み重なっていた。

そうしたなかで行われた2025年2月の選挙では、BJPが圧勝。

70議席中48議席を獲得し、見事に政権を奪還した。

中央BJPのモディ政権(与党)との強い連携によって、都市改革と汚職撲滅の加速が期待される。

いわば「国家プロジェクト」としてのデリー再建のスタートでもある。

レカ・グプタ氏

レカ・グプタとは何者か?

新州首相に就任したレカ・グプタ氏は、デリー大学で学生政治に関わり、BJPの学生部門「ABVP(Akhil Bharatiya Vidyarthi Parishad)」出身という生粋の政治家だ。

30年にわたって地域政治に関わり、草の根運動を通じて市民と直接対話を重ねてきた彼女は、「通りを自分の靴で歩く政治家」として知られている。

就任後の演説ではこう語っている。

「女性が夜道を安心して歩けるデリーにしたい。清潔な政治、開かれた行政、教育と雇用に全力を尽くす」
— レカ・グプタ氏就任スピーチより(The Hindu

就任演説に見えた“デリーの未来”

グプタ氏のスピーチでは、以下のようなポイントが明確に掲げられた。

  • 都市交通の整備と再設計
  • 公立学校の教育改革と予算拡充
  • 女性・若者の雇用促進
  • 汚職の撲滅と透明な行政

とくに注目すべきは、「女性の安全」を最優先課題としたこと。

性暴力や夜間外出における不安が根強いインド都市部において、女性CMからの力強い発言は、市民の期待を大いに高めている。

女性リーダーが挑む都市の課題とは

インドにおいて女性リーダーは珍しくないが、「首都」でそれを担うという意味は大きい。
グプタ氏が取り組もうとしているのは、単なる行政改革ではなく、都市の“信頼”の再構築だ。

教育、雇用、治安、インフラ。これらはすべて、民衆が政治を信じるための基盤である。彼女の挑戦は、インド全土の都市政策モデルになる可能性すらある。

モディ政権との連携とその影響

グプタ氏は、BJP本部との信頼関係が厚い人物でもある。
つまり、中央政府とのパイプが強い地方政権という構図が成立する。

これは、国家プロジェクトの資金や技術支援がスムーズに導入される可能性を意味する。

たとえば、スマートシティ開発や防災、地下鉄網の整備など、日本企業が得意とする分野においても、協力の可能性が広がっている。

日本から見るインド──都市を通じて「国」を知る

インドを見るとき、モディ政権ばかりが注目されがちだ。
しかし、インド含めて南アジアは本当に多様なのだ。

人口密集都市の課題、教育・インフラの格差、女性の権利——それらはすべて地方政治のテーマであり、各州がそれぞれ異なるカラーで動いている。

だからこそ、このデリーの政権交代は、南アジアを知るうえでの重要な一手になる。

あらむ
あらむ

日本も東京都知事は都民ファースト、大阪府知事は維新の会と国会与党とは別の政党ですよね。

外部リンク:

The Hindu

著者について
新夢シャド
新夢シャド
1991年、バングラデシュ生まれ。7歳から東京で育つ。大学を卒業後、株式会社ファミリーマートで総合職として10年勤務。その後、ネオクロスを起業し、バングラデシュを中心に南アジアの投資や旅行、文化や人の交流などを幅広く発信している。
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